令和6年税制改正後の住宅ローン控除・譲渡特例のポイント解説
こんにちは!いつもありがとうございます。税理士の玉造です。
マイホームの購入や売却に関する税制は、家計に大きな影響を与えます。令和6年の税制改正後、住宅ローン控除や譲渡特例の適用要件がどのように変わるのか、また、それぞれの制度のメリット・デメリットをわかりやすく解説します。
1. 住宅ローン控除(令和6年税制改正後)
住宅ローン控除とは?
住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、一定の条件を満たすと年末のローン残高に応じた税額控除を受けることができます。
令和6年の改正ポイント
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控除率:原則0.7%(改正前と同じ)
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控除期間:新築住宅は最大13年間、中古住宅は10年間
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対象となる住宅:省エネ基準を満たす住宅に重点化
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所得制限:合計所得金額2,000万円以下(改正前は3,000万円以下)
メリット・デメリット
メリット
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住宅ローンの負担を軽減できる
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長期間にわたり税額控除を受けられる
デメリット
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省エネ基準を満たさないと適用できないケースがある
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所得制限が厳しくなったため、一部の人は対象外になる可能性がある
2. 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
3,000万円特別控除とは?
マイホームを売却して利益(譲渡所得)が発生した場合、一定の条件を満たせば、最大3,000万円までの利益が非課税となる特例です。
適用要件
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売却する物件が自分が住んでいた家であること
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売却した年の1月1日現在で所有期間が短くてもOK(長期・短期は関係なし)
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配偶者や親族などへの売却は適用外
メリット・デメリット
メリット
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最大3,000万円まで非課税になるため、税負担が大幅に軽減
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所有期間の長さに関係なく適用できる
デメリット
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親族などへの売却は適用不可
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住宅ローン控除と併用できない(後述)
3. マイホームを売ったときの軽減税率
軽減税率とは?
マイホームを売却して利益が出た場合、所有期間が10年以上なら、通常よりも低い税率で譲渡所得税が計算される制度です。
適用要件
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売却する物件が自分が住んでいた家であること
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売却の年の1月1日時点で所有期間が10年以上であること
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3,000万円特別控除と併用可
税率
所得額 | 通常の税率 | 軽減税率 |
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6,000万円以下 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) | 14.21%(所得税10.21%+住民税4%) |
6,000万円超 | 39.63%(所得税30.63%+住民税9%) | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) |
メリット・デメリット
メリット
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長期保有の場合、税率が低くなり、納税額が抑えられる
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3,000万円特別控除と併用できる
デメリット
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10年以上の所有が必要であり、短期間で売却する場合は適用外
4. 各制度の併用可否
制度 | 住宅ローン控除 | 3,000万円特別控除 | 軽減税率 |
住宅ローン控除 | 〇 | × | × |
3,000万円特別控除 | × | 〇 | 〇 |
軽減税率 | × | 〇 | 〇 |
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住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用不可(売却すると住宅ローン控除は受けられなくなる)
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3,000万円特別控除と軽減税率は併用可
5. 適用選択時のポイント(有利不利の判断基準)
状況 | 有利な選択 |
住宅ローンを組んで新築・中古住宅を購入 | 住宅ローン控除 |
長年住んだマイホームを売却し、利益が出る | 3,000万円特別控除+軽減税率 |
所得が高く、税負担を抑えたい | 軽減税率 |
選択のポイント
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今後も住宅ローン控除を受けるか? → 継続なら3,000万円特別控除は諦める
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売却益が3,000万円を超えるか? → 超えるなら軽減税率の適用を検討
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長期保有していたか? → 10年以上なら軽減税率の恩恵を受けられ4. 各制度の併用可否
制度 住宅ローン控除 3,000万円特別控除 軽減税率 住宅ローン控除 〇 × × 3,000万円特別控除 × 〇 〇 軽減税率 × 〇 〇 -
住宅ローン控除と3,000万円特別控除は併用不可(売却すると住宅ローン控除は受けられなくなる)
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3,000万円特別控除と軽減税率は併用可
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まとめ
令和6年の税制改正により、住宅ローン控除の対象が厳しくなった一方で、譲渡所得に関する特例は引き続き活用できます。
どの制度を選択するかは、マイホームの購入・売却のタイミングや所得状況によって変わるため、慎重に判断しましょう。
どちらの制度も期限後申告でも適用可能ですので、判断に迷われている方やまだ申告されていない方はお気軽にご相談ください。